振り子とゼンマイ

朝、〈チルドレンハウス〉の鍵を開け、中に入ります。

と、耳に馴染んだあの音が、今日は聞こえてきません。

壁の上に目をやると、やっぱり。

柱時計が、でたらめな時刻を指して止まっています。

どうやら今朝方、動かなくなったらしい。

 

実は〈チルドレンハウス〉のメイン(?)時計、

これ年代物のゼンマイ式振り子時計なのです。

なので週に一度くらいでしょうか、よっこらしょ、と壁から下ろし、

針を動かす方のゼンマイと、ボーンボーンと音を鳴らす方のゼンマイとを、

ケリケリケリ、ケリケリケリ、と巻いていきます。

 

いつだったか、朝イチのその作業に偶然出くわした小学生の、

なんとも不可思議なものを見ている、という様子が、とても新鮮で面白かったです。

やってみたい、というのでゼンマイを渡して、レッツ・チャレンジ。

 

もうあらかた巻いてしまった後だったので、思うようには巻けませんでしたが、

手分けして子どもたちに少しずつ巻いてもらうような、

そんなイベントの機会を設けるのもいいかも知れません。

 

時計に限らず、電池を替えればなんでもすぐ動き出す、という時代に、

一生懸命ゼンマイを巻き切って、時刻を合わせて、振り子を動かして、真っ直ぐになるように壁に掛ける。

そして、振り子の音がキチンと均一のリズムを刻んでいるか確かめる。

そこまで手間暇かけて初めて、時計は正確な時間を知らせてくれる。

タブレット世代の子どもたちですが、案外たのしんでくれるかも知れません。

 

この建屋はもともと、何十年も続いてきたお店でした。

そのため、この柱時計の他にも、メーカーもわからないオルガンや、

五つ玉の算盤(そろばん)など、現代の子どもたちでなくても十分にレアなあれこれが、

生きながらえて使われていたり、棚に鎮座していたり。

 

そんな環境で毎日、子どもたちをお迎えしている〈チルドレンハウスひびうた〉です。

 

2023年11月24日

チルドレンハウスひびうた

スタッフ 市川潤