一冊入魂案内vol.1(1984年)

1984年

ジョージ・オーウェル

角川文庫

 

ブログでは初めて本の紹介をします。

まさか社会人になるまで10冊程度の読書歴の私が、本を紹介することになるとは夢にも思いませんでした。

 

ひびうたで図書館を運営するようになり、さらに本屋を開業したことで、日ごろから本に触れる機会が増えました。

 

本が身近なものになるにつれて好きになり、今では大好きな映画と同じか、それよりも多くの読書をするようになりました。

 

そこで本や著者に対して何の知識もありませんが、感動したことは伝えたくなる特性を活かして、一冊入魂案内を始めました。

 

初回は「1984年」です。

読むきっかけとなったのは、テリー・ギリアム監督の映画「未来世紀ブラジル」を鑑賞したことでした。

「1984年」を原作にした作品ということを知り、いつか読んでみたいと思って自店舗(ブックハウスひびうた)で客注したことも忘れていた頃、伊勢市河崎町の『古本屋ぽらん』さんで出会いました。

これは!と思い、一度きりかもしれない出会いを大切にしようと購入しました。

 

読み始めてからというもの、作品世界にのめり込んで一気に読了しました。

全体主義に支配された1984年のイギリスロンドンが舞台で、ビッグブラザーと呼ばれる絶対権力の目に見張られながらも、主人公の男性ウィンストンが革命を起こそうとする物語です。

 

ディストピアという世界を描いた小説を読むのは初めてでしたが、読んでみてまず感じたことは、腐敗した世界における日常的な場面がなんて美しく感じるんだろう。ということです。

ディストピアでなければ、友達とのお喋りや、恋人との触れ合い、自由に思考すること等は、当たり前に感じてしまいますが、このような日常は健全な社会の恩恵であることに気づかされます。

 

また、一つの国家が全体主義に陥るまでを「なるほど!」と納得させられる力がありました。

庶民を働き詰めで貧困な状態にすることにより生活のことしか考えられなくすることで、権力者が過去の歴史や重要な法律を改訂しても気がつかないように仕向けていたり、謀反を企てた者を殉教者として革命のシンボルにしないために、反逆者を反逆したまま殺害も自害もさせない等の徹底ぶりに恐怖を感じます。

 

そして全体主義とは無縁のような私たちの住む日本にも、同じような怖さが存在するように思います。

社会が求めることができなければ排除され、教育され、使い物にならなければ見捨てられる。

遠くの危機を考える上でも、身近な危機に気づく上でも、今まさに読む価値が高まっている本なのではないでしょうか。

 

物語としても、いくつもの伏線がどんどん回収されていく展開が面白い。

あの場面はこんな意味があったのか!してやられた!あっぱれ!といった感じです。

 

「未来世紀ブラジル」

の物語と随分違う点もあり、両方鑑賞すると楽しみは何倍にもなると思います。

 

購入した古本はハヤカワ文庫で表紙の装丁がイメージしやすいもの過ぎてあまり好きではありませんでしたが、客注したまま店頭にある角川文庫の装丁は考察するのが楽しくなるものだったので好きになりました。

 

「1984年」はブックハウスひびうた及びHIBIUTA ONLINE SHOPにてご購入いただけます。

興味を持たれた方は、ぜひ一度読んでみてくださいね。

 

ひびうた代表

大東悠二