ブックハウスひびうたの取扱出版社さん紹介⑥灯光舎さん

こんにちは。ブックハウスひびうた管理者の村田です。

 

読書週間特集、ブックハウスひびうたがお世話になっている出版社さん&書籍紹介シリーズ第六弾は、2019年に京都で生まれた出版社、「灯光舎」さんです。

 

 2019年6月に京都で船出した、新しい出版社さん。封筒型雑誌「アンパサンド」は、これぞ新しい出版物のかたち!京都の古書店「古書善行堂」店主の山本善行さんが選ぶ、日本文学の知られざる名作を紹介する「本のともしび」シリーズなど、文学の魅力を再発見できる出版活動をされています。装丁の美しさも群を抜いています。

 

『アンパサンド 詩的なるものへ 第一集1号』 

&の文字が印刷された一枚の封筒。開けてみると、豊かな「詩的なるもの」の世界が溢れだします。

うつくしい写真や、回文詩、史に関するエッセイなどが記された一篇一篇の紙片が、それぞれ一枚の芸術作品のように、封筒の中に収められています。

それは、まるで詩の世界から届く手紙のよう。(本当に手紙の形をした、「手紙小説」もありますよ。)

現在第一集「詩的なるものへ(6号完結)」のうち1号~3号が発売中です。6号集めて初めて完成する作品もあるとのこと。次に届く手紙が楽しみです。

 

『&アンパサンド 詩的なるものへ 第一集 第2号』 

封筒の中には、「詩的なるもの」の世界から届いた手紙の数々。

一篇一篇がそのまま芸術品のような紙片には、幻想的な回文詩やユニークな「手紙小説」が記されています。その中でも目を引くのが、詩と写真が印された、ホロスコープ調の一枚。第一号の土台と重ね合わせると、1枚で見た時とは違う作品が浮かび上がってきます。

一号ずつ集めることで、あたらしい楽しみ方が増えるシリーズ。ぜひ「詩的なるもの」6号全部集めてみてくださいね。

 

『&アンパサンド 詩的なるものへ 第一集 第3号』 

 一枚の封筒の中に束ねられた、宝石のような「詩的なるもの」の世界。

 灯光舎の新感覚雑誌、「アンパサンド」第一集の第三号が待望の発売です。

 今回「セカイは常に新しい」というサブタイトルを引っ提げて我々のもとに届けられた最新刊。刊を重ねるごとに、ますます新鮮な驚きを感じられるこの雑誌にぴったりの言葉ですね。

 一封だけでももちろん楽しめますが、第一号、第二号と併せて読むと、ゆるやかに続いていく「詩的なる」作品に、いとしさが倍増すること間違いなし。

 ぜひ、「詩的なるもの」の世界を完成させてみてくださいね。

 

『どんぐり』 寺田寅彦/中谷宇吉郎 著・山本善行 選 

京都の出版社・灯光舎が、古書善行堂店主・山本善行さんとともに、現代の人の心に染み入る日本文学の隠れた名作に光を当てた「本のともしび」シリーズ第一弾。

今回取り上げられる作家は、夏目漱石の弟子である、物理学者・寺田寅彦。

物理学者というと難しい文章を書くのかなと身構えがちですが、とてもスッキリした理知的な文章を書かれる方です。

この本の表題作である「どんぐり」は、寺田が病気の奥さんと過ごしたある一日の思い出のお話。奥さんの純粋さ、お互いを思いやる二人の絆を感じるにつれ、結末の切なさに胸を締め付けられそうに。

 

二人の姿を近くで見ていた寺田の弟子・中谷宇吉郎による後日談を読むと、病に引き裂かれる夫婦の運命が、さらに哀しく美しく感じられます。

 

『石ころ路』 田畑修一郎 著 山本善行 選 

 生きる「いい文学事典」の古書善行堂店主・山本善行さんが選ぶ日本文学の隠れた傑作選「灯光舎 本のともしび」シリーズ待望の第二弾。

 田畑修一郎という名前をご存じの方は、かなりの文学通でしょう。昭和初期に活躍し、芥川賞候補にもなったが、四十歳で夭逝した田畑。

 表題作の「石ころ路」は、瀬戸内海に浮かぶ島で過ごした日々の中で目にした出来事を綴った随筆。貧しい島で閉塞的な暮らしをせざるを得ない島民たちの鬱屈した関係性を描きつつも、その中で底の抜けたように明るい島の自然の描写が印象的です。

 他にも、小さな生を生きることの哀しみを描いた短編小説が二編収録されています。星空のような表紙にぴったりの、しんしんとした名文です。

 

『送別の餃子ー中国・都市と農村肖像画』井口淳子 著

中国の農村では、人と人が出会うときには麺、別れる時には餃子をつくる―

音楽学者である著者の井口さんが、伝統民族音楽の研究のため、中国の農村を訪ね歩いたときに出会った人々の記憶を鮮やかに描いたエッセイです。

一見押しが強くて自分勝手なように見えて、とても情が厚くて思いやりのある農村の人々。

障がいや貧困などの厳しい状況にも負けず日々を生き抜く人々の姿に、大地と共に生きる人間のたくましさを感じます。どこで生まれて、どのように生きてきても、人間と人間の心が通じ合うために大切なものは同じなのではないかと思わせてくれる一冊です。

現地の人々の暮らしを生き生きと表したイラストも魅力です。

 

アンパサンド編集者の間奈美子さんや、「本のともしび」シリーズ選者の山本善行さんなど、本の世界の第一人者の人々と協力して、ユニークな出版物をつくっている灯光舎さん。代表の面高さんとそれぞれの企画の主導者のみなさんのアイデアが、いい化学反応を起こして、唯一無二の面白いものができているんだなぁと思います。

アートが好きな人には、ぜひ注目していただきたい出版社さんです。

 

ブックハウスひびうた 管理者

村田奈穂