第1回日々詩書肆室読書感想〇〇

日々詩書肆室賞

HIBIUTA AND COMPANY賞 受賞作品

松居耕生 「『冒険者たち』 ガンバと十五ひきの仲間』を読んで。」

 ネズミには宿題がない。

 人間には生活があって、仕事があって、大人の宿題もある。感想文の締め切りの日があっという間にきてしまった。

 タイトルだけ書いて、本文は白紙で出そうか。それでもよいくらいなんだかこの作品を書きたかった。

 ガンバの冒険というアニメ作品の原作でもある本書。

 私はこのアニメが観たくて、まだ観れていない。

 そんなことで原作ならと、興味をもって自分の楽しみのためにずいぶん前から読み始めていた。読み始めていたが、少ししか進んでいなかった。書く前にもうちょっと読んだけ

ど、イタチのノロイとの対決まで。章の最後までは読み切れなかった。どうなるんだろ。まあ、大人の読書感想文はこれでもいいんだ。きっと。

 リアルな挿絵のネズミも、大昔にアニメ特集でちらりと観たアニメ版のネズミに差し替えて読んでいる。

 ガンバたちはよく動く。心象風景なんてない。感じたまま動く。とにかく動く。動く。

 衣食住、すでに事足りている。服は自前の毛皮、住むところはどこか探して適当に住み着く、食べ物はよく食べる。そんなガンバが目指したのは最初、海だった。

 ガンバ、ヨイショ、ガクシャ、マンプク、ボーボやオイボレ。

 ページの向こう側でなんだか、わいわいがやがや。それを読者である私は眺める。こういう”やかましい”感じが何かに似ている。

 子供の頃、毎月買っていた児童マンガ雑誌だ。

 小学校低学年、五百円玉を握りしめて、近所の書店に向かう。児童向けマンガ雑誌を発売日前に買ってくると、何百ページもあるマンガを飽きもせずに読みふける。一度も顔を上げず、ラジコンの広告の記事まで隅々、目を通す。水木しげるさんのマンガだけなじめず、いつも最後に読むのがお決まり。毎月それの繰り返しだったなぁ。

 ページを開くとこんにちは。ページを閉じるとさよなら。何かしらの仲間と世界と、すぐ、いつも自分のペースで冒険できるメディアだった。

 『冒険者たち』を読むと、その感覚を思い出す。ページの向こうがワイワイ、にぎやかなんだ。

 余白があっていっぱい足せそう。遊べそう。こういう物語は好きだ。

 大人になってからさすがに児童マンガ雑誌を買うのは憚られるので、良い楽しみをみつけた。児童文学だ。よい児童文学にはよい児童マンガのもっている要素がたくさんある。

スピード感と冒険の広がりがある。

 ガンバみたいにか、子供みたいにか、後先かんがえず動いて、読書感想文に挑戦して、どうもとうとう時間が来たので、終わりにしとく。

 もうちょっとで読み終わるけど、『冒険者たち』も、よい作品、面白いね。