屋根の色は自分で決める

屋根の色は自分で決める

こんにちは。

 

今月開所した女性専用「シェアハウスひびうた」は、早いもので一か月が経とうとしています。

来月の頭から二人目の入居者さんが生活を開始し、三人目の入居者さんの体験利用も始まります。

 

居場所づくりのきっかけはいつも目の前の一人ですが、その後に二人目三人目が続くという、居場所づくりの方程式の存在を年々確信しています。

 

土日を除いたこの一か月、一人目の入居者さん(以下、【入】)とほぼ毎日、夜勤という形で生活を共にしました。

【入】のことは以前からコミュニティハウスひびうたに通っていたことである程度理解していると思っていましたが、毎日顔を合わせて話を聞くことで、これまで知らなかったことがたくさんあることに気づきました。

 

シェアハウスひびうたに入居する前に、精神科の閉鎖病棟(※施錠されているため外に出るには許可がいる)に入院していたことは、日本の精神医療と障害福祉が抱える課題そのものだと感じています。

他人から見た問題が起きると、それを起こした本人に原因を求めて取り除くという、医学モデルという考え方があります。

医学モデルといっても福祉の世界にも蔓延していますので、根底には優生的な思想があるのではないかと思っています。

 

できるだけ普通の方へ

できるだけ正しい方へ

 

しかも、そのために本人ができないことをできるように変えようとする。

【入】を例にすると、入院前に同居していた人と相性が合わずに、相談しても解決されなかった。

そのため、他人から見たら問題を起こす。

その結果、問題を起こした本人に原因を求め、医療保護入院(※本人の同意に関係なく家族の同意で入院)になる。

そこで本人の治療をするが、元の生活には戻れないと宣告する。

本人談によると自分を責めて主治医に土下座をして謝ったとのこと。

 

こんなことが普通に行われている世界がある。

おかしいと思っても止められない世界がある。

 

こんなことを発言するとだいたい同業種の人たちは離れていくので、同業の仲間が少ないですが、仲良しクラブはいらないと思っています。

医療や福祉の名の元で専門性を盾に、いかに相手を変えようとする傲慢な支援が行われているか。

そのことに気づいて実践している仲間が全国各地にいることも知っています。

 

ひびうたの支援は本人に原因を求めるのではなく、本人を取り巻く社会(※環境や人など)に要因があると捉える、社会モデルの考え方を実践しています。

そのため、新しい生活環境を用意し、困ったときに相談して解決できる人や仲間の存在がある、という社会モデルを基にした支援を行いました。

本人に反省させることも、本人を変えることもしていません。

 

【入】は「遠くへ行かなくてよかった」とよく話をします。

本人の意思に関係なく、他人がよいと決めた場所で生活することがよくないと感じる人は多いと思います。

でも、そのために行動できる人は少ないとも思っています。

 

私たちは力の及ぶ範囲で後者として行動していける組織でありたい。

誰かのためにと思うことは簡単でも、誰かのために具体的に支援することは簡単ではありません。

思いだけでは助けられない人を助けるためには、知識と技術と実践から学ぶ力が必要です。

 

【入】が日々思い悩むことは変わらずにありますが、相談できる人や仲間がいます。

ありのままの姿で、生きたい街で暮らし続けることを応援しています。

 

またシェアハウスひびうたでは門限などの細かいルールを設けていません。

障がい者用のグループホームでは門限や入浴回数、日中の行き先まで決められていることも少なくありません。

そこまで管理をして安心や得をするのは運営側ではないでしょうか。

またこんなことを言うと同業者がさらに離れていってしまいますが…

 

福祉の世界では権利という言葉をよく耳にしますが、障がい者の権利とは何か特別なことではなく、障がいを持っていない人が普通にしていることができることだと考えています。

今日も【入】は好きなときに好きなことをしています。

 

自分が暮らす屋根の色は自分で決める。

 

当たり前のようで当たり前でないことを当たり前にできる環境を、これからも作り続けていきます。

 

※若干数ではありますが、シェアハウスひびうたの夜勤スタッフを募集しています。

ブログを読んで興味を持たれた方の連絡をお待ちしています。

 

ひびうた代表

大東悠二