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家族について考える本

こんにちは。ひびうた文庫管理人のアイマ イモコです。

 

18歳で実家を出てから、ちょくちょく中断をはさみつつ、10年くらい一人暮らしをしていた。

寂しいと思ったことはほとんどない。自分だけのペースで回せる生活が心地よかった。

30歳になった時に大病を患い、一人暮らししていたアパートから一時的に実家に戻り、そのまま2年間そこにいた。久しぶりに、毎日親兄弟と顔を合わせる生活が戻ってきて、ひどく戸惑った。

離れてから仲良くできそうな気がしていた兄弟に、たちまち優しくできなくなった。テレビが毎日ついているのがうるさかった。食事の量は私にとっては多すぎた。どうやって18歳まで何も思わずこの家の中で普通に暮らしてこられたのか、わからなくなった。

家族の方でも、予告もなしに突然帰ってきた自分をどう受け入れたものか、戸惑っていたのかもしれない(しかも重病を患っている)。母と兄弟が、私の希望を優先しようと、多くのことを我慢していることは、なんとなく感じ取ることができた。慣れ切ったリラックス感の中に、いつ爆発するかわからない緊張感をはらんだ2年間だった。

家族というと、強い絆で結ばれた、自分の分身のような存在だと思われがちかもしれないが、実際は自分とは別の身体と精神を持った他者である。距離が近く、常に顔を合わせていなければならないだけ、より一層思いやりが求められる相手だが、実際には最も配慮が忘れられがちな存在かもしれない。

家族を他者とみなすことを忘れたことにより引き起こされる家庭の悲劇は、古今東西を問わず見受けられる。

今回の新型コロナウィルス騒動により、普段は仕事等であまり顔を合わす時間の無かった家族と、いきなり長い時間を共に過ごすことになった人もいることだろう。その時あなたが家族に感じたものは、一体どんなものだっただろうか。いたたまれない居心地の悪さだろうか。それとも、意外に強い親しみであったか。

あなたと家族の間柄がどのようなものであれ、「家」という場所が重要性を増している今、改めて家族という存在について深く考えてみるのも悪くない。下記の本が、あなたと家族との関係を紐解く鍵になってくれたら、幸いである。

 

①『私は私、母は母。』 加藤伊都子 著   すばる舎

あらゆる生物は母より生まれる。子にとって、母の影響力というものは絶大である。ましてや、20年近くの年月を未成熟の「子」として親の庇護下で育つ人類は、一生のうちの多くの時間を母親との密接な関係の下に過ごすことになる。さらに、それが同性同士の母娘の関係であれば、お互いがお互いにとって誰よりも近しい存在であると言っても過言ではないだろう。母と娘の心理的な距離の近さは、一体感を形成するのに一役買っているが、反対に緊張を孕む危険性も強く持っている。お互いが、自分とは別の個性を持った個人であるということを、忘れがちになるのだ。母は決して娘の一生を左右する権限を持っている存在ではないし、娘は母親の分身ではない。

本書では、母との関係に悩む娘に対して、相手を変えようとするのではなく、母親を「一人の等身大の女性」と認めて、自ら距離を置くという方法を勧めている。共依存的な母子関係から抜け出すための第一歩は、自分が自分の望む道を歩き出すこと。その勇気を与えてくれる一冊だ。

 

②『夫の扶養から抜け出したい』 ゆむい 作 KADOKAWA

「専業主婦」と呼ばれる立場の人々に、今まであまりお目にかかったことがない。

生家はバリバリの共働きだったし、たまに出入りする大人の女性たちも、大抵何らかの仕事を持っていた。自分も大人になったら、当然のように仕事をしながら家のことも全部して、子供を育てるのだと思っていた。母が当たり前にやっていることなので、それほど大変なことのようには思っていなかった。

大人になった今、働きながら子供を育ててきた母の負荷の大きさをありありと感じている。

自分が生きるのでさえわりとしんどいことなのだ。子供を産んで、人を守る立場になった母親や父親のみなさんが、毎日どれだけ努力や苦労をしなければならないかは、その経験がない自分からは想像するしかない。

本書で描かれている問題は、夫が妻の苦労を慮ることができないことに端を発している。夫は夫で、会社で理不尽な長時間労働を課せられ、苦しんでいる。しかし、パートをしながら家事育児をすべて回す妻の苦しさは、彼の目からは見えていない。

自分が苦しいときに、目の前にいる相手が自分より楽をしているように見えるのは、自然な人間の心理だと思う。しかし、そこで僻んでしまったり、自分の苦しみを相手になすりつけてしまったりしては、健全な人間関係を保つのは難しくなる。相手も、自分と同じように苦しむ心を持つ人間なのだということを忘れないことが、人と共に暮らすにあたっては大切なことだろう。

また、人間の生き方に正解はない。仕事と家庭生活が両方できたらやればいいが、両方はしんどすぎる、私は家庭だけ・私は仕事だけ・両方やらない、というのも、もちろんありだ。母たちの時代よりははるかに楽になったと思うが、さらに気軽に生き方を選べる世の中になればいいと思う。

 

③『浅田家』 浅田政志 写真 赤々舎

上でさんざん家族に対して否定的な考えを述べたものの、家族が仲が良いのはいいことだと思っている。子供が大人になって、両親の銀婚式か何かの旅行に連れて行ってあげている場面とかを見ると、いいなぁと遠い目になってしまう。

本書は、前後半にわかれている。後半は、仲良し浅田家(お父さん、お母さん、お兄ちゃん、弟)の家族スナップだ。四人で温泉に入ったり、公園でお弁当を食べたり、家で昼寝したりと、和気あいあいと過ごす姿がカメラに収められている。その自然な笑顔を見ていると、彼らが本当にお互いのことを思いやることのできる、いい家族なのだということが感じられる。そんなほのぼの、しみじみする後半に対し、前半は少し変わっている。浅田家四人の家族写真であることは変わらない。しかし、前半の浅田家は、様々な職業や場面に仮装した、「なり切り」家族として登場しているのだ。メンバーが変わらないのに、四人のキャラクターは写真によって全く変わってくるので、その雰囲気の違いを楽しむのも面白い。私は、「校長先生のあいさつ」の写真や、「ラーメン屋さん」の写真が好きだ。どの写真でも変わらないのは、家族がみんな全力で演技していることと、その表情が常に生き生きしていること。

「弟」、浅田政志さんの撮影に喜んで協力する彼の家族は、やはり飛び切りのいい家族であることに違いない。

 

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