· 

レポート:描かない絵本づくり『じゃばら絵本』(第一回)

まず一本の線を引く。

そこから《描かない絵本講座》は始まりました。

鰻の寝床のようなひびうたの空間。
年長さんから小学生、大人の方まで10名を超える参加者の前には、
これまた長い長い、子どもが両腕を広げたほどの白い紙。
 
2025年度を通じて計4回開催されるこの講座では、
毎回違った方法で絵本をつくります。
つくりかたは違っても、製本はハードカバーの同じ判型なので、
できあがった本を書棚に揃えれば、
ちょっとしたコレクションのようになるのだとか。
 
初回のこの日は[じゃばら絵本]
 
めいめいが引いた一本の線は
直線・波線・曲線etc. 色も太さもさまざま。
思い思いの「一本の線」が、
それぞれの前に置かれた全長70センチの紙面に踊っています。
 
それにしても、どうしてまず一本の線なのでしょう。
先生に尋ねてみたところ、こんな答えが。
 
まっさらな紙を前にすると人は、最初のページに何を描けば?
どんなお話の展開にしよう? もしも失敗したら?
…..といった思いから、なかなか手が動かないのだそう。
 
それゆえページ立ての心配の要らない[じゃばら]に、
とにかく一本線を引く。それも端から端まで。
思いきって描いてしまうことで、
頭で考え過ぎて躊躇することから解放され、
のびのびと進めることができる、とのこと。
 
なるほど。
 
「何を描く」という意識以前に生まれた、それぞれの線たち。
では次はその線が、何に見えるか。線を何に見立てるか。
そこから生徒さんたちの、物語が動き出します。
 
大蛇に見立てた人。
心電図だと話す人。
大地の人もいれば、海の人も。
土の上と下を舞台に花と球根の移り変わりを紡いだり、
チンアナゴやいろいろな長い生き物の世界を広げたり。
 
もちろん、なかなかインスピレーションが湧かない、
そんな生徒さんもいらっしゃいます。
先生は一言「だったらそれをナシにして、裏を使ってもらえばいいですよ」
 
失敗なんてない。どこまでも自由な創作の時間。
「一本の線」から膨らむ想像力に、
ひびうた全体が満たされたひとときでした。
 
次回は[ちぎり絵絵本]。
どんな世界が生まれるのでしょう。
只今ご予約受付中です。
※7月6日(日)13:00〜15:00

2025年5月13日 市川