続・居場所の文化について

居場所の文化についてを書いてから約半年が経ちました。

この間に、居場所の文化の作り方を考え実践してきたことをまとめました。

 

2022年6月1日からスタッフ12名の新体制で、居場所の文化を創るための航海に出ます。

コミュニティハウスひびうたを海(社会)に浮かぶ一つの島(居場所)とし、到着する船(就労支援/住居支援)を大型船から小型船の運航に切り替えます。

 

これまでは大型船の中で、乗組員(支援員)と乗客(利用者)、乗客と乗客の相性が合わないことなどが理由で、船内が荒れることがありました。

そのまま島に到着すると、島に滞在する島民(居場所のスタッフ)だけでは受け止めきれない日もありました。

 

大型船といっても、国の基準では乗組員1人に対して乗客7.5人で、十分な体制ではありました。

それでも、荒れる島を目の前にして、船を増やすことに舵を切りました。

 

具体的には、まずこれまで3隻(3部門)だった就労支援の船を7隻(3部門7班制)に拡充しました。

いつもそうなのですが、ラッキー運というものが強いのか、ラッキー運を引き寄せる何かがあるのか、思考して計画して実行に移すタイミングで、人に恵まれます。

 

今回の改革には多くの乗組員が必要でした。

単純な人の数だけでなく、ひびうた流の居場所をつくる想いを共有できる人が必要でした。

 

誰とでも分け隔てなく接することができる人間力に長けた乗組員。

本が大好きで人の気持ちを和らげることができる包容力に長けた乗組員。

昨年末に退職し一旦ケアに専念してから復帰した考察力に長けた乗組員。

 

待ち望んだ通り新たな3人の乗組員と出会い、すでに試験運航を開始しています。

7隻にしたことで、単純計算をすると乗組員1人に対して乗客2人の体制になりました。

 

次に、一隻一隻の乗組員と乗客のバランスを整えました。

 

これまでの考え方では船内にも島内にも違いのある多様な人が集うことを目指していましたが、これからの考え方は、船内の多様性は目指さずに船の種類を増やすことで、島をより違いのある人が安心して集える場にしてくことを目指していきます。

 

海(社会)の中では効率がどうか、能力がどうか、学歴がどうか、そういった優生的な基準で人が判断され、個性が抹殺されかねない波(圧力)が渦巻いています。

 

そんな波に流されることなく、島までの運航を安全にする。

ただ試験運航の中で、すでに居場所の文化をつくる上での新しい課題も生まれています。

 

それは、島には入場制限がなく、島内のルールは島民と旅人(島に到着する人々)に委ねられているため、あらゆる船に乗った旅人が到着し出会い、どこか別の島の浜辺(プライベートビーチ)で遊ぶことも自由です。

 

島では関係がよくても、浜辺では関係がわるくなることがあります。

浜辺が荒れたままで船に乗り込むと船内の環境が整えられていても、運航を中止せざるを得ないことがあり、島に辿り着けなくなります。

 

この課題を解消するのは今の私たちの力ではできません。

ただ、どのように将来、解消していけばよいかをイメージしています。

 

それを最近読んだ児童文学「ジム・ボタンの機関車大旅行」から学びました。

主人公のルーカスが住んでいるフクラム国は、山が2つだけあって住人が4人だけしか住めない小さな小さな国です。

そこにもう1人の主人公のジム・ボタンが郵便屋さんの誤配でやってきます。

これ以上、人が住む場所がないと嘆いたアルフォンス12時15分前王(12時15分前に生まれたフクラム国の王)は、ルーカスの機関車エマを処分してジムの住む場所を確保しようとしました。

それに反対した、ルーカスとジムとエマが旅に出るところから物語が始まります。

 

そして、様々な冒険の果てに、フクラム国に地続きの新・フクラム国が誕生し、3人は故郷に帰ることができました。

どのような経緯で新・フクラム国が誕生したのかは、物語を読んでいただくのが面白いと思います。

 

フクラム国の王はエマを処分しようとしたことを反省し、他の島を奪うわけでもなく、新たに島を増やすことで国が小さくて人が住めないという課題を解消しました。

 

コミュニティハウスという島だけで、作れる居場所の範囲には限界があります。

そのため今はせめてひびうたが関わる事業(就労/住居)において船を安全に島まで運航させ、島民の力(特に聴く力や価値観を尊重する力)と旅人の良心によって、島を多様かつ安心な場にしていくことしかできません。

 

その先は、浜辺で傷ついた人の心の専門的なケアを受けることができる別の島と貿易関係(連携)を結んだり、また新たなケアや文化や共有を目的として島を新・フクラム国のように誕生させる。

 

さらに、そうすることで船に乗りたくても乗ることができない人たちをも乗員してもらえるようになり、新しい形の船を運航させることができると考えています。

 

これまでのように決して、島に入場制限を設けることなく、守れない人が一人でも出るようなルールを設定することなく、違いがありながらも安心できる場を目指し続けていきます。

 

また機関車エマは、海を走るときは船になることもできます!

船内のルーカスとジムの関係が良いため、フクラム国に到着しても平和が保たれました。

このことからも、安全な小船を走らせることの大切さを感じることができました。

 

これで居場所の文化が完成、ということはもしかしたらこの先もないのかもしれません。

それでもなお、理想を忘れず現実に絶望せず、理想の方角を向きながら現実から一歩ずつ前進していきたいと思っています。

 

12人が操縦できる船の形、乗せることができる乗客と人数は、1人1人全く異なります。

船が大きければ大きいほどよいわけではなく、その1人が苦しまずに操縦することができ、安心して乗ってもらえる人が1人でもいたらいいと思っています。

 

大きな船には大きな船の、小さい船には小さい船の、個性的な船には個性的な船の良さが必ずあると信じています。

 

住居支援の1隻と就労支援の7隻の船が島に向かうイラストを描いてくれたのは、にゃーさんこと(南野京子)です。

限られた時間の中で簡単にイメージを共有し短時間で書いてくれた島を見たとき、フクラム国の話をしていなかったにも関わらず、山が二つある島になっていて、すごい奇跡だなぁと嬉しくなりました。

 

そんな奇跡やラッキー運をも味方にして、12人の航海士と新たな冒険の旅に出発します。

 

2022年5月29日

ひびうた代表 大東悠二

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コメント: 2
  • #1

    久保舎己 (金曜日, 03 6月 2022 13:06)

    希望が生まれましたね。

  • #2

    大東悠二 (金曜日, 03 6月 2022 13:20)

    久保舎巳さま

    ブログを読んでいただき、ありがとうございます。
    スタッフを信頼して、勇気の航海に出たら、希望が生まれました。