ブックハウスひびうたの取扱出版社さん紹介⑧夏葉社さん

こんにちは。ブックハウスひびうた管理者の村田です。

ブックハウスひびうたがお世話になっている出版社さん&書籍紹介シリーズ第八弾は、東京吉祥寺の出版社、「夏葉社」さんです。

 

夏葉社

 云わずと知れた、独立系出版社さんの草分け的存在の夏葉社さん。流行や世間の風潮に揺るがされない、いつまでもいい本を届けてくれます。中身のすばらしさは勿論、見た目の美しさ、手触りの良さにも一切妥協がない本づくりに、代表島田潤一郎さんの本に対する愛情が溢れています。

 

『レンブラントの帽子』 B.マラマッド著/小島信夫・浜本武雄・井上謙治 訳

オランダの大画家・レンブラントに関する話かと思いきや、レンブラントは登場しません。

お互いにソリが合わない、ある美術学校のふたりの教師。良好な関係を築こうと努力するのですが、ささいな言葉が原因となって、決定的にすれ違ってしまいます。

心に小さなトゲのように突き刺さる、他人に対する反感は、日常の多くの場面で私たちが経験することかもしれません。

周囲を巻き込んでまで冷戦を繰り広げるふたりは、果たして和解することができるのか。

なんとも情けない主人公たちを、はらはらしながら見守りたくなってしまいます。

著者のマラマッドは、アメリカで活躍したユダヤ人小説家。

本書に収められた三篇の短編小説にも、絶妙な距離感で、うらぶれた人々を冷静に、しかしあたたかく見つめる視線が活かされています。

 

『昔日の客』 関口良雄 著

かつて東京・大森にあった伝説の古書店、「山王書房」の主人・関口良雄さんが、お店のこと、お客さんや本の著者との交流について綴った随筆集。

静かで滋味深い文章から、多くのお客さんに慕われた関口さんの人柄がしのばれます。

本屋として生きていくうえで大切なことを、ときに厳しく、しかし決して説教臭くなく語ってくれる関口さんの言葉は、本に関わる全てのひとの胸に灯りをともしてくれるはず。

読むたびに、慰められたり、背筋が伸びたり…。

山王書房はもうありませんが、読んだ後は近所の本屋さんに話しかけたくなる一冊です。

 

『美しい街』 尾形亀之助 著 松本竣介 画

小さめの版型が親しみを感じさせる一冊は、明治時代生まれの詩人、尾形亀之助の55篇の詩を集めた詩集。

ひとつの詩が2~3行と、短いものも多い尾形の作品。

行間は静けさが満ちており、雨の日やひとりの夜に少しずつ読むのにぴったり。

生活の哀しみや、身の回りのものへのささやかな愛情をうたったその言葉は、街の騒音に疲れた心に、慈雨のように沁み込んできます。

いつも自分の傍に置いておいて、かなしいときや疲れたときに開きたい、やさしさに満ちた一冊。

尾形と同時代に活躍した画家、松本竣介の挿画も、抒情を感じさせてくれます。

 

『90年代のこと 僕の修業時代』 堀部篤史 著

京都の人気書店・「誠光社」の店主、堀部篤史さんによるエッセイ集。

インターネットも今ほど一般的ではなく、SNSはまだ台頭していなかった1990年代。

多くの若者が雑誌を情報源に、ファッションや音楽、映画などの文化を謳歌していました。

テレビも、現在よりもずっと存在感がありましたね。

「みんなが知っている〇〇」が生き残っていた最後の時代かもしれません。

そんな90年代に青春時代を過ごした堀部さんが、自らが親しんできた雑誌や映画を通して、時代の空気を振り返ります。

そして、そのころに浴びた文化のシャワーが、いかにその後の自分の仕事、さらに「誠光社」という店を形作っていったかが描かれています。

なつかしいだけではなく、新しい発見がある一冊。

 

『漱石全集を買った日』 山本善行・清水裕也 著

本に興味のなかった若者が、自分を変えようと少しずつ本を手に取るように。そして、ある日古本屋で出会った「夏目漱石全集」が、彼を強烈な「古本病」患者にしてしまう…。

この本は、「古本病」の先輩である、京都市左京区の「古書善行堂」店主・山本善行さんと、そのお客さんでこれまた大変な「古本病」患者の清水裕也さん(通称:ゆずぽん)による、楽しい対談集。

まず冒頭のゆずぽんさんの本棚に目が釘付けに。そのまま古本屋が開けそうです。写真を見ているだけで、こちらも「古本病」に感染しそうになります。

店主とお客という壁を軽々と乗り越えて、本好き同士の対話が繰り広げられる本編は、お二人の本に対する情熱と、山本さんの「本を読む人」を応援する熱い思いにぐっときます。

こんなにも人を強く揺り動かす力、そして人と人とを結ぶ力が、本にはあるんですね。

 

『風の便り』 小山清 著   

「好きな人のことを褒めることで生涯を送りたい。」

素敵な言葉ですね。

昭和初期に活躍した小山清は、太宰治の弟子としても知られる文筆家。

貧困や病気などに苦しみながらも、家族や小さなものに対する愛情を静かな私小説に綴り、文学ファンから愛されています。

本書はそんな小山の貴重なエッセイ11篇を集めた随筆集。

ひとりひとりに向けられた手紙のような文章が親しみを感じさせてくれます。

日常の中で目にした小さなものに向けられた穏やかな眼差しに、ひだまりのようなあたたかさがあふれている一冊。

高橋和枝さんの小さなイラストにも気持ちがほっこり。

 

 

『喫茶店で松本隆さんから聞いたこと』 山下賢二 著

 伝説のロックバンド「はっぴいえんど」のドラマーにして、日本歌謡曲史に残る名曲を数多く作詞されてきた、作詞家の松本隆さん。

 音楽界の第一線で長く活躍されてきた松本さんが、京都の喫茶店で、人気本屋店主の山下さんに語った自分の生き方や歌作りのこと。

 冒頭から一生心に刻み付けたくなる言葉の連続です。

 嘘をつかないこと、時間を大切にすること、孤独とうまく付き合うこと…

 人として普通のことを大事にし続けることが、松本さんの偉大な仕事をつくってきたのだなと思います。

 ものをつくる人をはじめとして、今を生きるすべての人に読んでほしい一冊です。

 

『のどがかわいた』 大阿久佳乃 著

鈴鹿市出身の文筆家・大阿久佳乃さん初の著書となる随筆集。

大阿久さんは、17歳の頃から、詩の魅力を伝えるフリーペーパー、「詩ぃちゃん」を発行し続けています。

本書では、「詩ぃちゃん」vol,1~vol.5の全文とともに、彼女が今まで親しんできた本のことや、10代最後の日々の中で考えたことを著した書き下ろしエッセイが収められています。

透徹した思考に裏打ちされた、やわらかく震えるような感性に、ぜひ一度触れてみてください。

 

『絵本の中へ帰る』 高村志保 著 

 絵本を開けば蘇る愛しい日々の記憶。

 長野県茅野市に店を構える「今井書店」店主の高村志保さんが、人生の節々で出会った絵本について、一冊一冊紹介したエッセイ集。

 それぞれの絵本への思いには、自らの少女時代、まだ幼い子どもだった息子さんの姿、いつも愛情深く見守ってくれた初代店主のお父さんとの思い出など、高村さんの人生が焼き付いています。

 自らも子どもの感性を失わず、憧れたり、ときには怒ったりしながらも町の子どもたちに本を届け続けている高村さんの言葉に耳を傾けながら、自分の大好きだった絵本のことを思い出してあげたくなる。そんな一冊です。

 

代表の島田さんにお会いするために、東京の夏葉社オフィスを訪れた時のこと。数々の素晴らしい本をつくっていらっしゃる島田さんを前に緊張していた私でしたが、なんと島田さんはひびうた代表みみちゃんとお好きなサッカーの話で大盛り上がりでした。

どれだけ評価されても、謙虚で、親しみやすさを失わない島田さん。常に「具体的な誰か」のために本を届け続けてきた島田さんだからこその揺るぎない立ち方なのかなと思いました。

 

ブックハウスひびうた 管理者

村田奈穂