ブックハウスひびうたの取扱出版社さん紹介⑦港の人さん

こんにちは。ブックハウスひびうた管理者の村田です。

読書週間は終わってしまいましたが、出版社さんの紹介は続けます!

ブックハウスひびうたがお世話になっている出版社さん&書籍紹介シリーズ第七弾は、鎌倉の出版社、「港の人」さんです。

 

港の人

鎌倉から、数々の美しい詩の本やエッセイを出版されている「港の人」さん。「港の人」さんの本を読んでいると、自分の周りの空気が一段とクリアになるような、芯の通った清涼感のようなものを感じます。「生涯に一篇の詩」を見つけてほしいという代表の上野さんの熱い思いが、今を生きる人のための詩を届けつづけてくれています。

 

『田村隆一詩集 言葉のない世界』 田村隆一著 

「荒地派」を代表する詩人・田村隆一の第二詩集、「言葉のない世界」が約60年ぶりに復刊!

なんのこっちゃ…という前に、まずはページを開いてみてください。

広大な荒地に独り屹立して、まっすぐにこちらに問いかけてくるような硬派な言葉のカッコよさに、衝撃を受けること間違いなしです。

「言葉なんか覚えるんじゃなかった」

常に言葉の網が張り巡らされた文壇にありながら「言葉のない世界」を渇望する詩人の心に触れたとき、逆説的に言葉の持つ力が身に迫ってくるような感覚に捉えられます。

ミュージシャン・曽我部恵一さんによる寄稿「ぼくらには詩が必要だ」も必読。

 

『惑星』 片山令子 

少し冷たくて、透明感のあるレモンイエローの表紙。

その色のように純粋かつ透明感のある文章で、何気ない日常や大好きな本について綴られたエッセイです。

身の回りのものすべてに穏やかな愛情を注ぎ、日々の一コマ一コマを大切に過ごしている片山さん。

その世界観を形作ってきた童話の世界に触れてみたくなる一冊です。

 

『僕の鎌倉散歩』 田村隆一 著 

杖を片手に微笑むダンディな男性は、日本三大詩人のひとりとも言われる、詩人の田村隆一。

田村さんが終の棲家として選んだ鎌倉の町について記したエッセイと詩が一冊の本になりました。

いつもの道を歩いて、お気に入りの店でお酒を一杯。雑木林で一輪の可憐な花に足を止める。ふらっと入った喫茶店で味わう珈琲…硬質な文章で綴られた悠々自適な日々は、うらやましくなるほどカッコいい! 

この本で田村さんのファンになった方は、『田村隆一詩集 言葉のない世界』も一緒にどうぞ。

 

『空とぶ猫』 北村太郎 著 

 詩人の北村太郎さんは、猫が大好き。

 不機嫌そうな猫、ケンカする猫、風来坊の猫…。

 太郎さんの詩に登場すると、みんなたまらなく魅力的に見えてしまうから不思議です。

 太郎さんが尽きぬ愛情を持って一匹一匹を見つめてきたからこそ、このように生き生きと彼らの姿をえがきだすことができたのでしょう。

 後年猫と一緒に暮らせなくなってからも、近所で出会う猫たちにあたたかい眼差しを注ぎ続けた太郎さんの書くエッセイは、猫を愛でる喜びと共に、ほんのりとした哀しみも漂っています。

 本書には、随所に詩人の描いた猫の絵も。空を飛んでいるように自由に見えます。

 

『港の人』 北村太郎 著 

 鎌倉市にある出版社「港の人」の名前の由来になった詩集。

 昭和中期に活躍した「荒地派」の代表的詩人、北村太郎さんが、晩年を過ごした鎌倉の町で、海と老いていく自分の姿を見つめてうたった詩33篇が収められています。

 しん、と凪いだ海のように静かな言葉の連なりが、読む者の心を空想の世界にいざなってくれます。ひとり海を眺める「港の人」の後姿が、詩の中から立ち上ってくるようです。

 巻末には、近年発見された単行本未収録詩も収録されており、北村さんの魅力を思う存分味わえる一冊です。

 

『心のてのひらに』 稲葉真弓 著 

 私が生まれた日の三日後、地震は起きた――

 そこに居合わせなかった痛みを抱えつつ、詩人の目は東日本大震災で命を失った人々と、被災して傷ついた人々を見つめます。

 遠く離れた場所にいるからとて、人は起こった出来事と無関係でいられるわけではありません。

 人の苦しみをわが苦しみとして引き受けるところに、祈りが生まれ、詩が立ち上ってきます。

 自ら病床に伏し、生死を深く見つめざるを得ない中で他者に注がれる慈悲の眼差しが、深く心に突き刺さる詩集。

 

『えびな書店店主の記』 蝦名則 著 

 東京・小金井市にある美術専門古書店・えびな書店には、かなり貴重な美術品と、かなり独特な人々が、続々と集まってきます。

 店主の蝦名さんが、日々一流の芸術作品や美術に関する資料と向き合う中で思いを馳せた芸術家たちの人生、店を運営する中で出会った人々との思い出、敬愛するピエロ・デラ・フランチェスカの絵をこの目で見るために出かけたヨーロッパへの旅などについて、縦横無尽に語ったエッセイ集。

 その豊富な知識と鋭い鑑識眼、そして何よりも、心の底から芸術と本を愛する気持ちが、文章からひしひしと伝わってきます。

 芸術を愛する人にとっては、この上なく楽しい一冊です。ポケットに入れて、古美術店を覗きに行きたくなるかも。

 

『世界 ポエマ・ナイヴネ』 チェスワフ・ミウォシュ著 

 1980年ノーベル文学賞を受賞した、ポーランド出身の劇作家・詩人であるミウォシュが、第二次世界大戦下で書き溜めた詩集。

 当時ナチス・ドイツの支配下にあったポーランドでは詩を発表することができず、詩集はひっそりと地下出版されました。

 綴られているのは、戦争で蹂躙された社会の中で書かれたとは思えないほど、静かで穏やかな日常の姿。そして、愛や正義、希望に対する消えない信頼の言葉。

 この世の悲惨の全てを集結させたような戦争の中で、それでも人を信じ、生命を愛したミウォシュの言葉が、戦後70年を経て、初めて日本に届きました。

 平和について、生きる幸福について、じっくりと言葉をかみしめながら、考えてみたくなります。

 

港の人さんの本の周りには、朝一番の空気のような、澄み切った気が満ちているような気がしてなりません。代表の上野さんを鎌倉に訪ねたときに見た、海辺の景色を思い出して、あの海の穏やかな景色が、港の人さんの本の中に生きているのかなと感じました。

心の深い所に静かに語りかけてくる詩のことばたちに、耳を澄まして向き合いたくなります。

 

ブックハウスひびうた 管理者

村田奈穂