「ブックハウスひびうた」への道

こんにちは。まちライブラリー@ひびうた文庫担当の村田です。

いつもまちライブラリー@ひびうた文庫をご利用いただき、ありがとうございます。

 

2019年10月に、ひびうた文庫がまちライブラリーの一員として新しいスタートを切ってから、およそ一年半が経ちました。

この間、多くの方のご協力のおかげで、当初200冊足らずだった蔵書が、ほぼ寄贈本のみで1500冊を超えるまでに増えました。

また、2020年10月に始まった貸し本棚サービスも好評をいただいており、毎回6名の定員様いっぱいにご利用いただいております。

 

このように地道に成長を続けてきたひびうたの「本」部門ですが、この度2021年4月23日より、新たな挑戦を始めることになりました。

それが、本屋「ブックハウスひびうた」の開業です。

 

なぜ私立図書館という本のある場所を営んでいるのに、本屋まで?と疑問に思われる方もみえるかもしれません。

本屋さんがあればいいな、と思わせてくれたのは、居場所の利用者さんの一言でした。

そのひとは、棚一杯の本を眺めながら、「これ全部買えたらいいのに。私は期限とか忘れちゃうから図書館は苦手だけど、返さなくていいなら本読むのにな。」とつぶやいていました。

その言葉を聞いて、私は本との出会い方には人それぞれに合った方法があるのかもしれないと思うようになりました。

あまりお金持ちではない自分にとって、図書館というものは無料でいい本を読ませてくれるとてもありがたい場所ですが、期限を守るのが苦手な人、古い本に触るのに抵抗がある人にとっては、利用しにくい場所でしょう。 また、ゆっくり読みたいのに、期限内に返さないとと焦ってしまって、せっかくの本をあまり楽しめなかったという経験のある人もいるかもしれません。

 

さらに、本屋さんという場所の特別な力を感じさせてくれたのは、本を読まない友人と小さな本屋さんを訪れたときのことでした。

それまで本屋さんを訪ねることのあまりなかった友人は、最初退屈そうにぶらぶらしていましたが、ふと棚から一冊の本を取り出して、「これ面白そうだから買ってみるよ」と言いました。

しばらく後、その友人が目を輝かせて、「あの本、すごく面白かった!あの著者が書いた他の本も読んでみたいな」と話しかけてきました。

その後本を手に取るようになった友人は、何冊かの心の底から感動できる本にも出会い、読書の楽しみに初めて気づいたと話してくれました。

その友人にとって、読書の扉を開いてくれたのは、一冊の本との出会い。そして、その出会いは、一軒の本屋さんが、いい本を選んで、その本を魅力的に見えるよう並べてくれたから訪れたものだったのです。

 

そのように振り返って周りを見渡してみると、町には本屋さんも図書館もあるものの、そのすべてが本との良き出会いの場として機能しているかどうかはわからないと感じました。

中型のチェーン書店に置かれているのは、どこにでもあるベストセラーや、すぐ読めてすぐに役立つハウツー本が多く、人生を変えるほどの感動を伴う読書体験を与えてくれるような本が埋もれてしまっているのではないかと思えたからです。

さらに、今の「売れる本」に、「バカ」などの言葉で人を貶める傾向や、ある特定の人々を排除しようとする傾向が見え隠れしていて、少数派の人々にとって、砦にもなり得る書店が、逆に居心地の悪い場所になっているのではないかと感じました。

 

世の中の多数派の意見に圧迫感を感じている人、自分の意見を持っているけれどあまり誰にも理解されない人が、ほっと一息つけて、自信を取り戻せる場所が必要だ。

押し流されずに自分の道を歩いている人の声、かき消されてしまいそうな目立たない人の声、現代の日本の常識に縛られない声をとりあげた本を集めた本屋さんがあれば、そのような人々にとっての居場所になるのではないか。

その思いが、本屋「ブックハウスひびうた」の種になっています。

 

担当 村田奈穂