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junの支援日記 9

こんにちは。junの支援日記、9回目です。

 

 とってもお久しぶりになってしまいました。書いていなかった期間、うれしいことに珈琲がたくさん売れて、忙しくしていました。

私たちが対応しきれない部分もあって利用者さんには少し負担もかけてしまい、反省しています。

ブログを書いていない間に新しく仲間として加わった利用者さんもいて、少しだけにぎやかになりました。

 

季節はすっかり秋から冬になり、私は毎朝布団から出るのがおっくうになっています。人間はもはや変温動物ではないのか、寒い時期には冬眠生活をしたほうがいいのではないかと、本気で考えたくなります。

私が仕事をしている部屋は焙煎機が常に稼働していて、割と暖かいのがせめてもの救いです。

 

 

さて、前回のブログで、「境界線」について利用者さんに伝えてみたという話を書きました。人と人との間には適切な境界線というものが必要で、越え続けると摩擦が起きる、と伝え、今までDさんが感じていた困りごとは、誰でもの道理だという共通理解を持つことができました。

 

今日は、その次の段階。3.自分の感情を整理するについて書きます。

 

ここからは、私からの働きかけだけではなく、Dさんも一緒に実践してもらいます。

 

境界線を適切に引いていくためには、自分が何を感じていて、どうしたいか?という感情の整理が重要になってきます。

それが分からなければ、境界線が侵された時にどの辺りにラインを設定するのがいいか分からず、攻撃的になりすぎたり、遠慮して何も言えなくなったりします。

 

感情の整理。これが単純なようで、意外と難しいものだな、と今回考えてみて実感しています。

人間の感情は「うれしい」「悲しい」というシンプルなものが一つずつ順番におきてくる訳ではないんですよね。

 

例えばちょっとしたミスをしたけど、報告したら相手が笑って許してくれた時。

 

ミスをして、「悲しい」「くやしい」「はずかしい」。

失敗をした自分に「腹が立つ」。

上司が許してくれて、「ほっとする」「うれしい」「申し訳なく感じる」。

あるいは、本当は許していないんじゃないかと「不安になる」。

また次も失敗するのでは?と、「こわくなる」。

こんなことをモヤモヤ考えてしまう自分に「嫌気がさす」。

 

などなど、他にもまだあるかもしれません。

これらのことを一度に感じ、整理し、処理していくのはけっこう難易度が高いことなのだなと感じています。特に、自信をなくしている人や、何らかの特性を持っている人には。

そもそも、誰も完全には整理などできないのが感情なのかもしれません。しかも、時が経つといったん忘れてしまったりもする。

 

境界線、という概念を初めて知ったDさんに「自分の感情を整理してとらえて境界線を引く」ということを、どうやって実践してもらうか?

 

考えた末、今やってもらっているのが「感情メモ」です。

 

「感情メモ」は、こんな感じ。

 

 

=================================================================

 

起きたこと・感じたタイミング

  

 

感情とその強さ(いくつも選んでOK)

 

不安         弱・中・強

イライラ・怒り    弱・中・強

うれしい       ・中・強

かなしい                               弱・中・強

焦った        弱・中・強

楽しい        弱・中・強

こわい        弱・中・強

おどろいた                      弱・中・強

とまどった                      弱・中・強

気になった                           弱・中・強

その他(                  )  弱・中・強

 

考えたこと

 

 

振り返り(書かなくてもOK)

 

 
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起きたこと・感じたタイミングには、日付と出来事を書きます。

 

良かったことでも、悪かったことでも、なんでも。「感情が動いたな」と思った時に。できるだけ具体的に。

仮にさっきの例で書いてみるなら、こうです。

「〇月〇日 焙煎でミスをしてうまくいかなかったが、支援員に伝えると笑顔で『大丈夫だよ』と言われた。

 

 

感情とその強さは、いくつも選んでいいこととして、弱・中・強に〇をつけます。

 

さっきの例だと、「楽しい」以外は全部〇がついてもおかしくありませんね。

人間の感じる感情の種類のバリエーションとしては足りないくらいですが、あまり多すぎると複雑すぎてしまうので10種類までにしました。

「気になった」は感情の種類としてはやや曖昧な表現ですが、「〇〇が気になって…」とDさんが話してくれることが多く、その時はだいたい境界線がゆらいでいるので、あえて足しました。

どれにもあてはまらない、と感じる時や、Dさんオリジナルの語彙が出てくることも考え、「その他」も用意しました。

強さの表現は数字で「1~5」と細かく刻むこともできますが、そこもなるべくシンプルに、「弱・中・強」のみとしました。(2なのか3なのかって、迷いだすと決めるのけっこう難しくないですか?)

 

この「感情とその強さ」の項目に〇をつけてみるだけでも、自分の気持ちを俯瞰でみて整理することができます。

 

予想外の事が起きて、驚いたし、戸惑ったし、焦ってしまったな。とか。

自分が一番強く感じたのは不安だったんだな。でも、怒られなくて安心してうれしくもあったんだ。とか。

 

それだけでも少し、楽になります。

 

 

次に考えたことです。ここには、その感情が起きた時に考えたことを様々書いていきます。

 

「感じたこと」、つまり感情と「考えたこと」は、言葉の意味としては少しちがいます。

 

例えば…

 

「クイズの答えを考える」とは言いますが、

「クイズの答えを感じる」とは言いません。

 

「考える」はそれぞれが知的に分析したことです。客観的視点の思考ですね。

それに対して「感じる」は感覚や感受性によって判断される行為です。

 

「思ったこと」はおそらくこの二つのハーフといったところで、主観的な思考判断のことですが、「思ったこと」と「考えたこと」の境目はとっても曖昧です。

 

「今日は焙煎をしようと思っている」

「今日は焙煎をしようと考えている」

 

どちらも文章としておかしくはないです。

焙煎が仕事でなく個人的な趣味や予定だとしたら「思っている」が適切かもしれませんね。

 

で、何が言いたいかというと、「考えたこと」という項目ではありますが、感情が動いた時にこのメモを書くと、ほとんどの人が「感じたこと」から生じる、どちらかと言えば「思ったこと」をかなり混ぜながら書くことに実際にはなってしまいます。

 

こんなに失敗して、クビになるんじゃないか。

なぜ失敗しても怒らないのだろう。

怒られなくてよかったな。

明日はうまく出来るだろうか。

焙煎の方法を変えたほうがいいのか?

 

こんな感じ。「客観的視点の思考」ではない部分が多いですね。でも、感情メモの「考えたこと」はこれでいいと思っています。

感じたこと・考えたこと・思ったこと、全部ごちゃ混ぜでも、まずはいったん広げてみる場として「考えたこと」を使っています。

 

悩み事があるとき、私たちはなぜか「考え事をしてしまう」と言います。「思い事をしてしまう」「感じ事をしてしまう」と言いません。「知的」に「分析」しているつもりなのかな?

悩みの渦中にいると、それがもはや知性からくる考察ではなくなってしまっている場合でも、気づけないことが多いのではないでしょうか。

それをきちっと俯瞰で見れたり、こっけいだな、悩むのもばかばかしいや、と面白がれたりした時おそらく何かが変わっていきますが、まずは一人でそこまで行けなくてもいい。

 

 

少し話が回りくどくなりましたが、最後に振り返りです。

 

失敗すると落ち込みがちだが、気にしすぎなのかもしれない。ミスしても怖がらず報告しよう。

 

といった感じに、感情を客観的に整理したり、今後の対策など書きます。どちらかというとこっちが正式?な、「考え事」かもしれません。

 

これは、書けなくてもOKとしました。で、だいたい本人がずっと抱えているこじらせた課題(家族との関係など)の場合、振り返りが書けなかったり、書けてもこれでいいのか?と迷いが大きかったり、不十分だったりします。

そういった時には、支援員と一緒に振り返って今後の事を考えたり、ひとまず答えは出さずに「こう感じて、こう考えたんだね」というところで保留にしておきます。

 

 

 

「初めは(何でこんなメモ書かないといけないのか)意味分からないと思うけど、続けてみて」とDさんに渡すと、少しずつ書いてきてくれました。予想通りですが初めは情報量が少なかったり具体性に欠けましたが、だんだん上手に書けるようになりました。

 

感情メモは2週に一度の面談の際に確認するのですが、今までは「最近どうですか?」と聞いてもそもそも記憶が曖昧で、イライラしたのは覚えているがなぜだったか忘れていたり、言おうとしていたことを忘れてしまったり、本人の説明ではいまいち意を得なかったり…という場面が時々ありましたが、感情メモを元に話を聞くことで、そういったことがかなり整理されました。

 

始めてから約3ヶ月。「こんなこと、書くか迷ったけど…」と言いながらも、Dさんは様々なことを書いてきてくれるようになりました。

仕事でイベントに出た時の失敗や嬉しかったこと、家族との関係、プライベートで買い物に行き楽しかったこと、仕事の帰り道に自転車が飛び出してきてびっくりしたこと…などなど。

感情メモを元に、今まで本人について知らなかったことや気づけていなかったことも、たくさん聞かせてもらいました。

 

 

やってみて分かったのは、「感情の整理」を適切にしていくには、Dさんは支援がかなり必要な方だな、ということです。

 

いつかひとりでに感情の整理のコツをつかむ、ということはDさんの障がいや当面の環境の中では考えにくく、それよりは「何かあったら信頼できる人や知識のある人に話を聞いてもらい、気持ちや考え方の回復・修正を試みる」という癖づけが大事なのだ、ということに気づくことができました。

 

これは支援する私にとって、確認出来てとてもよかったと思っています。

 

今までどこか「じっくりと話を聞き続けたら、成長(?)して、いつか一人で色々考えられるのではないか」というぼんやりした期待と「いや、そんなことは難しいのでないか」という気持ちとの葛藤があったように思いますが、今は「とにかく『相談する』ことの良さを感じて癖づけしてもらいたい」と考えていて、それでいいのだ、それがいいのだ、その糸口としてこのメモを使ってもらおう。と、すっきりできた気がします。

 

そもそも「一人で感情をコントロールできるようになること」を成長のように感じてしまっていたことに私自身が気づけたし、それ自体が障がいの有無にかかわらずなんだか違ったなあ、と思っています。

 

 

【「境界線」の話~実践編~3】でした。

 

結局整理すべきは利用者さんの気持ちではなく私の気持ちだったのだ、利用者さんのだとしても、整理するにはこちらの担える余地がまだたくさん残されていたのだ、というオチになってしまいましたが、「感情メモ」をやってみたからこそ、はじめてつかめた実感でした。

 

次回が「境界線」についての最後の回です。

 

 

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