· 

junの支援日記 7

こんにちは。junの支援日記、7回目です。

 

少しお久しぶりになってしまいました。

 

9月5日にひびうたの周年祭「ひびフェス」があり、いつもより考えることとやるべきことが多く、ブログを書く時間がとれないでいました。

 

これは私の経験上の感覚ですが、優しさとは「余裕」なのではないかと思います。

とっても忙しくて目が回りそうな時に誰かにさらに何かお願いをされたり、集中したいのに同時にいろんな人に話かけられたりすると、どこかでストップをかけなければどうしても質が落ちてしまいますし、他人への配慮や心遣いといったことを考える隙がなくなります。当たり前の話と言えば当たり前の話ですが。

 

本当に猫を大切にしている人は、管理しきれないほどの多頭飼いをしないといいます。

保護すべきかわいそうな猫は世の中にたくさんいるのだろうけれど、場所や資金がないのに、たくさんの猫を不十分な環境に押し込めることは、かえって不幸を呼ぶことを知っているからなのでしょう。

 

そこで、「余裕」が持てるように十分な広さのある土地や経済的資産を調達する、というのももちろん大切なのでしょうが、それができない場合には、自分の持てる範囲で「余裕」が出るように調整していくしか仕方ありません。

 

自分の「余裕」の範囲から外れてしまったものはどうなるのだろうと、どうしても気になってしまうのが「優しい人」なのだとは思いますが、その優しさを、目の前のものに対して貫くには線引きをしないといけない……なんともツラいところですね。

 

 

 

さて、【「境界線」の話~実践編~1】です。今書いたような、他人のことをどうしても心配してしまう「優しい人」、周囲が気になってしまう「よく気がつく人」、そして人の期待に応えようと「一生懸命な人」が、境界線を侵しがち、侵されがちです。

 

前回、「境界線」を守ることよりまず「人は境界線を侵してしまうものである」という事を知ることが大切だと思っています、ということを書きました。(前回のブログはこちらから

 

 

そして、現実のところは境界線を侵し合いながら、実践で学んで、自分も相手も心地よいラインを探っていくしかない、とも書きました。今それを毎日少しずつやってみてもらっていますが、「心地よいライン」というのにたどり着くのは、まぁかなり難しいです笑

 

そもそも相手のあることなので課題を感じているのは片方の人間だけだったりするし、じゃあ話し合ってみよう、伝えてみようと場を設けても、それぞれが特性を抱えているため、シンプルに単語が間違っていたり、話が聞けなかったり、伝えようとして聞いてもらえないと、余計に腹が立ったり。

 

私もまだまだ手探りすぎなので、実践編として書いてしまうことにやや迷いもありますが、今の時点の記録として、書いてみようと思います。

 

Dさんは、AくんやBさんの自由すぎる言動に、いつもイライラしていました。

 

自由すぎる、というのはDさんから見た姿であって、AくんやBさんにとっては普通のことであったり、むしろ精一杯やった結果であったりするのですが、とにかくDさんにはそのように見える時が多くあり、戸惑いや驚きから苛立ちになっていったのだと思います。

 

Dさんは、どちらかというと厳しい両親や祖父母に育てられ、それ故に「こうあらねば」という思いが強くなりがちです。

 

それを人にもしてもらいたいと求めてしまって高圧的な態度になってしまうこともあります。

逆に彼が「上の立場」とみなした人間のいう事は絶対で、出会った当初は無理な事でも断れず引き受けてしまってしんどくなってしまう事はしょっちゅうでした。そして失敗してしまうと、期待に応えられなかった自分に自信をなくしていき落ち込む、というのがパターン。

前職では本人の特性を知らない厳しすぎる上司や怠けて頼ってくる同僚を相手に境界線を侵し・侵されまくり、体調を崩して辞めざるを得なくなってしまいました。

 

もしも「境界線侵し・侵されランキング」があったら、トップクラスの実力の持ち主。

 

ですが、ひびうたで仕事をしてきて、自分の課題にも気づき、彼は3年間で大きく成長しました。

「こうあらねば」に疑問を持ち自分で考え始めたし、安心できる職場に居続けることで彼本来の人を思う純粋な気持ちも出てきて、本人の努力もあり、仕事仲間への接し方もかなり柔らかくなりました。

Dさんは「自分は変われたのだ」と思い、人と接することに少し自信を持ち始めていたのです。

 

で、それを脅かしてきたのが、AくんとBさんの登場です。笑

 

Dさんから見えているAくんは、こんな感じ。※()内は私の感じていることや対応です。

 

・人の話を聞かない(こちらの伝え方が悪いと、反応しづらい。聞こえていても、特性からすぐに返事ができないことがある)

・すぐにサボる(苦手な作業だと、集中しにくい。同じ作業を長時間続けると、疲れやすい)

・すぐに休憩をとる(上記のように疲れやすかったり、現状普段からの生活リズムがうまく出来ておらず、生活リズムを整え切るまでは無理せず休憩をとるようにと私が決めていました)

・簡単なことをわざと間違える(平易にみえることであっても習慣がつくのに時間がかかることがある。わざとではないが注意が欠如している部分がある)

 

Bさんは、こうです。※()内、同じく

 

・すぐに人の話に入ってきて、屁理屈を言う(気になることやこだわりが多く、自分の意見は堂々と言うタイプ。伝え方は少しずつ練習中)

・目上の人への尊敬がなく、どの相手にもタメ口で、失礼だ(ひびうた内では先輩や年上、支援員に敬語を使うようにとの指導はしていない。初対面の方など、Bさんも場面によっては敬語を使うこともできる。盛り上がってくるとタメ口になったりはするが…)

・支援員の目を盗んでサボろうとする(楽に無理せず仕事をしたい、という思いが強く、それ自体は悪いことではないが、相談なくこっそりやり方を変更してしまうことが多い。課題ではあるので改善中)

・落ち着きがなく、焙煎中なのに遊んでいる(Bさんの焙煎は電動焙煎機のため、待っているだけの時間がある。以前は歩き回って隣の部屋まで行ったり途中でトイレに行ったりしていたが、今は合間に工具をいじっている程度で焙煎に支障がないため現状を見守っている)

 

 

()内の事情は、Dさん自身の特性等もあって、Dさんには察することが少し困難です。また、Dさんは支援員ではないので、察することができるようになることを求めてもいません。

 

でも、こういったことがDさんにとってはどうしても「気になる」のです。

 

しかも、勇気を出して自分なりに相手に要望を伝えてみても、いままでのメンバーのようにはこの2人にはすんなり伝わらず。

むしろ、せっかく伝えても無視されたり煽られているように感じてしまって(実際にはそうではない時もあるのですが)、より2人への苛立ちを強め、今までひびうたで仕事してきて出てきた自信や安心感も揺らぎだす、という悪循環。

 

 Dさんが私たちにこのことを相談してくれたことがきっかけで、私は境界線について考え直しました。

 

ひびうたで働くうちに様々なケースに直面し、私自身は「これは境界線の曖昧さゆえの問題だ」「境界線を引くことが大事だ」ということにはすぐに気づくようになってきていましたが、それを利用者さんに伝えるとなると、すごく難しい…。

それでも、避けられない大切な課題だと、改めて感じさせてもらったのです。

 

 

そして、悩みながらも今実践してみているのが、以下のことです。

 

1.「気になる」をひとまずは良しとする

2.境界線について知る

3.自分の感情を整理する

4.境界線を一緒にひいてみる

 

 

さて、まずはひとつ目から。

1.「気になる」をひとまずは良しとする

 

前回のブログでも書きましたが、「気になる」をやめるのは容易ではありません。

 

「他人のことを気にしすぎだよ。課題だから気にしないようにしよう」と言い、新しい考え方を提示しても、いきなり切り替えできる人はなかなかいません。気にしないでいいよ、とこちらが伝え続けることで、そもそも相談するのをやめてしまうこともあり得ます。

 

不十分な伝え方や疑問の残る主張であっても、まずは相談してきてくれたこと、自分の中で留めず共有しようとしてくれたことを、いったんは受け止めることにしています。

 

Dさんは最初ひびうたに来た頃はそもそも誰とも話せず、というか、話さず。はじめはしばらく居場所に通い、少しずつ仕事に取組んでいきました。

 

仕事でも何か失敗をするたびに「もう終わりだ」「クビになる」と思い込み、その思いを吐露することもうまくできませんでした。

そんな彼が「なんだかこのままではいけない気がする」と考え、相談してきてくれたことをまずは喜びたいと思いました。

 

人の嫌なところに自分が苛立っていることを報告するというのは、とても勇気のいることではないでしょうか。ましてや、今まで厳しい大人たちに囲まれ、悩んでいると「お前は弱い」「人に迷惑をかけるな」と言われてきたDさんです。もしかしたら、せっかく相談してもひびうたでもまた同じように怒られたりしてしまうのではないかと、内心ドキドキなわけです。

 

いつも「言っていいのかな」と不安そうにしながら話してくれるDさん。内容がどんなことであっても、「話してくれたこと」に対しては毎回「ありがとう」と伝えるようにしています。

 

 受け止める、と書きましたが、全てに共感する、同意する、ということではありません。話してくれたことが支援員の見ている事実とは異なっていたり、客観性に欠けることはあります。

全てを「そうなんだ、それは嫌だったね、ひどいね、私もそう感じるよ」という風に聞く必要はないと思っています。

 

それでも「あなたはそう感じているんだね、伝えてくれてありがとう」と、ひとまずは気持ちを受容する、というところです。

その安心がなければ、どの支援も次のステップに行くのが難しくなると感じています。

 

 

 

前回「2回に分けて」と書いたのですが、実際書いてみると少し分量がいりそうです。なので、続きはまた次回にさせていただこうと思います。

 

【「境界線」の話~実践編~1】でした。

 

 

 

ブログを書かない間に、少し涼しくなってきましたね。新型ウィルスの状況は相変わらずですが、少しずつ新しいことを考えて動き出した人達も出てきて、励まされています。

大きなことはできませんが、ひびうたも感染に気を付けながら変わらずに居場所と仕事場を守り、誰かに少しでも励ましを届けられたらと思います。いつも読んで下さりありがとうございます。それでは、また。