junの支援日記、二回目です。
前回、私は支援員ですという自己紹介をしました。
福祉の仕事の中での「支援員」には様々ありますが、支援員の中でも私は「職業指導員」という立場になります。
職業指導員は、利用者の意向や適性に合わせて、職業上の技術を習得する訓練、指導を行います。
特に必要な資格等はありません。
一般的には専門の勉強をしたり、経験を積んだりして職業指導員になっていくケースが多いのかもしれませんが…私は今までに福祉の資格を学んだことや経験はゼロです。
ひびうたがコーヒーを作りはじめたのは、3年前の2017年。私がひびうたで働きはじめたのは、2年前の2018年の4月から。
この2年間で身につけた知識、自分の中で変わっていったこともたくさんありますが、大きく変わらないこと、変えないでいようと思うことが2つあります。
ひとつは、「専門家になりすぎないこと」
もうひとつは、「自分達の仕事で、他の誰かの励ましになれるものを作ること」
この2つです。
ひとつ目の「専門家になりすぎないこと」。
これはそもそも、知識や経験がなく、専門家に「なれない」という部分が大いにありますが、何も知らないからこそ、障害や疾患のみにとらわれることなく、思い込みなく、ひとりひとりの利用者さんと向き合っていけることが良かった、と感じています。
障害や病気にはそもそもグラデーションがあり、生まれ育った生い立ちや環境、また本人の障害への受容や理解の度合い、働くことに対して求める事や目指す事なども、様々です。さらには毎日の体調や気分で全く違うことも。
こちらの声かけのしかたひとつで変わったりもします。
それらの全てを予測したり、把握したりして「問題なく」対策、解決していくことは、私などにはとうてい出来ないことだと、すぐに悟りました。
なので、自分の浅い経験や知識で「〇〇であるはずだ」「〇〇に違いない」と決めつけたりすることはやめようと決めています。
(決めていても時々、やってしまいそうにはなるのですが…)
知らないから、分かっていないから、いろいろな方向から考えてみて、それでも分からない時には無理せずに「分からない」といったん保留にしたり、他のスタッフと共有して相談するようにしています。
そして、小さなトライ&エラーを繰り返すしかない、と割り切り、いろいろやってみて、良くなかったら変えてみる。
消去法で正解に近づいていくようにしています。
以前、箱を折って組み立てる作業をしていました。
これは少しコツがいり、得意不得意がとてもはっきりしている作業でした。
箱折りの作業が始まったとき、一番はじめに私たちが取り組んだのは、
・全員が折ってみる
です。誰が得意で誰が不得意なのか。不得意な場合、何につまずいているのか。
(器用さ、体力、他の人と比べてしまい疲れる、などなど)
まず、「よく観る」ことにしています。これが多分とっても大事で、そして難しいです。
その上で、理由によって、以下のように対策していきます。例えばこんな感じ。
・器用さ→本人の分かりやすいよう工夫して指導したり道具を使ったりしてみる
・体力→疲れたら休んでいいことを伝える(ひびうたでは疲れたら時間を決めて休めます)
・眠気が出てしまう→30分間別室で寝る
・人と比べてしまう→一人だけ別の部屋で作業
・立っていると腰が痛くなる→イスを用意する
・長時間折っていると乾燥で手が荒れる→手袋を用意する
・箱のフタを折るのは苦手だけれど、箱本体は得意→本体のみ折ってもらい分業制にする
・何故か一人でやっているとペースが落ちる→同じ作業をする人を隣に配置する
・いろいろやってみたが、どうしてもできない→箱折り以外の作業をする
小さなことから、大きなことまで(?)さまざまです。
おそらく通常の「仕事場」ではあまり考えられないような対応も(「寝る」とか…)、素人ならではの発想でたくさんやってみます。
これらの対策がうまくいけばそれでいいし、どうやら合ってないな、と思ったら「よく観る」に戻り原因を探り直し、新たな支援の方法を考えます。
「手袋を用意する」の場合、「用意したものが使いにくかった」となれば、別の素材のものに変えてみる。「30分寝てみたがまだ眠い」となればもう30分寝てみる。…といったように。
どんな作業でも基本的には、毎日その繰り返しです。
箱折りも、始めた時にはうまくできなかったり、疲れてしまったりする利用者さんが多かったですが、いろいろやってみる中でそれぞれのやりやすい折り方や場所、役割を見つけることができ、何か月かかかりましたが最終的には全体のスピードも倍近くアップすることができました。
「専門家になりすぎないこと」というより、「専門家でないので、こうするしかないこと」のような気もしますが、道のり遠いようでも、やってみないと分からないことばかりで、結局このやり方しかありませんでした。
利用者さんにとっては、苦手なことでも一度はやってみたり、変更が多かったり、ひとつずつ試していくことで、時には遠回りにさせてしまっているかもしれません。
でも、この方法を続けていく中で、良いこともたくさんありました。
ある利用者さんは、自分のことを「不器用なんで」と不器用と言えば高倉健かオレか、ばりに決めつけて箱折りも「できない」と諦めかけてしまっていました。
向いていなければ無理にしなくてもいいのがひびうたの方針なのでそれでもいいのですが、いろいろな方法で挑戦していく中でうまく折れるようになり、意欲や自信をつけることができました。
またある利用者さんは、とても奥ゆかしく控えめな性格で、自分の気持ちを言うのが苦手でしたが、次から次へと「試してみる」うちに、自分から「こうしてみてはどうでしょうか」と意見が言えるようになり、少しだけ楽な気持ちで仕事に取り組めるようになりました。
こういった「良いこと」があると調子に乗りがちな私はつい「専門家になれるかも」と勘違いしてしまいそうになります。
そこをぐっとこらえ、いつでもなるべくフラットで新鮮な目線で「専門家になりすぎないこと」をこれからも意識していきたいと思っています。
junの支援日記、第二回目でした。前回は挨拶だけだったので、今回はじめて具体的な支援について書いてみました。
書いてみて、これは誰に需要があるんだろう?とけっこう不安になりましたが、こんなふうに毎日ひびうたのコーヒーが作られているんだなあ、ということに興味がある方に少しでも伝わっていったらいいなと思います。
次回は、支援員としてずっと変えないでいようと思うことの2つのもうひとつ「自分達の仕事で、他の誰かの励ましになれるものを作ること」について書いていこうと思います。

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