居場所宅配サービスについて

ひびうたの新サービス「居場所宅配サービス」を4月10日から開始します。

このサービスを開始するにあたっての思いやサービス内容についてまとめました。

 

昨日4月7日、政府から緊急事態宣言が発令されました。

新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちも含めた多くの人たちが困難な状況に追い込まれています。

私たちはこれまで生きにくさを抱えた人たちの「居場所」をつくることを目的に5年間、活動してきました。

「居場所」といっても、一人一人が何をもって「居場所」と感じるかは人の数だけ違いがあることだと思います。

 

それでは私たちが考える「居場所」とは何か。

はじめに「心の安全基地」であることを大切にしています。

「心の安全基地」とは、傷つけられない安全性、わかってもらえる共感性、応えてもらえる応答性、いつも変わらない不変性があることで、何でも話せる関係性を築くことができることだと思っています。

この5年間で、多くの生きにくさを抱えた人たちが、社会に絶望し、自分に絶望し、他人を恨み、自分を憎み、生きることを諦めそうになったり(生きることを諦めた人もいました)、他人も自分も信じることができなくなり、生きる価値なんてないと思いながら、かすかな希望を抱いて「居場所」に来てくれました。

 

そんな生きにくさを抱えた人たちが「安全基地」に通うようになり、これまで誰にもわかってもらえなかった胸の内を打ち明け、世間の常識や他人と違ってもいいと思えるようになり、薄紙が一枚ずつ剥がれていくように安心して生きられるようになっていく姿を見てきました。他人や自分を信じることも、人とつながろうと思うことも、何かに挑戦しようとすることも、まずは心に安心が必要だということを実感しています。

「安心という大地の上にしか、自分らしい花を咲かせることはできない」そんな風に思っています。

 

この「安全基地」としての「居場所」づくりから始まり、安心して働ける職場をつくりコーヒーという名の「居場所」を届け、本を介してゆるやかに人と明日につながる文庫という名の「居場所」を運営してきました。

おかげさまで年々利用してくださる人が増え、地方の新聞社やテレビ局から取材を依頼されることも増えました。

 

ひびうたが5周年を迎える2020年9月を前にして、いままで取り組んできた居場所づくりが試されています。

文化施設が軒並み閉鎖され、カフェなどのサードプレイスにも密集が気になり行きづらく、どんどん安心して過ごせる居場所を失っている状況の中で、会えない人の居場所づくりができないかと考えました。

 

思い返せば同時多発テロ、リーマンショック、東日本大震災などの困難に社会が直面したとき、私は自分のことだけで精一杯で何もすることができませんでした。ただ今回の新型コロナウイルスによる困難に社会が直面したとき、自分のことだけでなく、他人のためにできることがしたいと強く思いました。それは、これまでひびうたを運営してこられたのは、多くの人の支えがあったからだと思うからです。居場所づくりに賛同してくれるスタッフがいて、居場所に通ってくれる利用者がいて、珈琲の原材料を作ってくれる人がいて、珈琲を飲んでくれる人がいて、珈琲を届けてくれる人がいて、本を寄贈してくる人がいて、本を読みに来てくれる人がいるからこそ続けてくることができました。一度も会ったことがなくても、人と人はつながっていて他人なしでは生きていけないことを感じています。

 

だからこそ、自分も他人も大変なこの時、贈る気持ちで居場所を届けようと思いました。

具体的には、「本とコーヒーのある、居場所」を宅配します。

ネット上の本棚(登録中)から一冊読みたい本を選んでもらい、自家焙煎珈琲をセットにしてお届けします。

本は販売ではなくひびうた文庫の寄贈本の貸出で、読み終えたら返信用封筒に入れて返却していただきます。

本の後部にある感想カードには寄贈者からのメッセージと読者の感想が書ける欄があります。

寄贈者と読者、読者と読者がゆるやかにつながれる仕組みになっています。

 

誰もが生活に不安を抱え、経済的に余裕がない状況だということを踏まえて、旧パッケージの珈琲にすることと、梱包と発送に使用する資材はこれまでストックしていたものを使うことで、価格をできる限り抑えました。

一人でも多くの人に活用してもらえるサービスにするため、今回は利益のことは考えていません。

 

もしかしたら本とコーヒーを届けるだけでは「安全基地」としての居場所にならないかもしれません。

それでも、いま、私たちができることのすべてで、あなたへ「居場所」を届けたくて新サービスを開始します。

準備不足で不便をおかけすることがあるかもわかりませんが、開始まで残り2日、スタッフと一緒に進めていきます。

新サービス開始日には、改めてサイトページをお知らせします。

 

また、ひびうた文庫はこれまで約250冊の本を寄贈していただきました。

居場所宅配サービスは送料の理由で、厚さ3㎝以内の本しか送ることができません。

選べる本が多ければ多いほど、利用しやすいサービスになると思いますので、改めて寄贈本を募集しています。

あなたの"一冊"が、他の誰かの居場所をつくる"一冊"になるかもわかりません。

もし本を寄贈していただける方がいらっしゃいましたらhttps://www.hibiuta.org/contact/からご連絡をいただけると助かります。

 

誰もが生きにくいときだからこそ、贈り合う気持ちで未曽有の状況を共に乗り越えていきたいと思います。

 

ひびうた代表 大東(みみちゃん)