新年度を迎えて思うこと(代表)

 新型コロナウイルスが世界中および日本中で拡大する中で、新年度を迎えました。

このような状況で新年度を迎えることは、誰にとっても不安な気持ちだと思います。

社会では「密閉・密集・密接」の3つの密は、できるだけ避けるように呼びかけられています。

ひびうたは「本とコーヒーのある、居場所」として、5年間運営してきました。

小さな家に、多くの人が集まる場所であることから、3つの密は避けることができません。

むしろ3つの密が、孤独な私たちを支える側面として機能していました。

密閉することで、外の目を気にしなくていいと感じます。

密集することで、一人じゃないことを感じます。

密接することで、拒絶されていないと感じます。

 

 居場所に出かけることは、社会にとっては不要不急の外出と見なされるでしょうが、居場所がない人にとっては「食料品を買う」のと同等かそれ以上に、必要で急を要する外出にあたるのではないかと思っています。

なぜなら、居てもいいと思える場所がないからです。

なぜなら、生きていてもいいと思える場所がないからです。

なぜなら、生きにくくて生きにくくてたまらないからです。

 

 今の私たちにできることは、いつもと変わらず居場所を開け続け、感染のリスクを背負ってでも「生きるために」居場所に来た人を大切にすることでした。

この姿勢はこれからも変えるつもりはありません。

明日4月3日(金)は、利用者さんリクエストの「花見しようぜ」を通り開催します。

三重テレビさんの取材も入り、取材の模様は4月19日(日)18:15~「ゲンキ!みえ!」で放送されます。

私たちの居場所が大切にしていることの一つに「人を管理・指導しない」ということがあります。

こんな社会の情勢でも大切にしていることはブレずにやっていきます。

 

 このように、居場所は開けつつ居場所に来るかどうかは個々人の判断にまかせています。

そのような中で一番の気がかりが、居場所に行きたくても自粛している人たちのことです。

これまで居場所にしていた場所が閉まってしまい、居場所を失っている人たちのことです。

そういった人たちのために、何かできることはないかと、スタッフと知恵を出し合ってきました。

そして出た答えが、居場所に行きたくても行けない人に「居場所」を届けることでした。

でも、どうやって会えない人に居場所を届けたらいいのか。

どうやったらその人のいる場所が居場所になるのか。

そんなことは可能なのか。

できない理由を考えたらきりがありませんが、できる方法を考え続けていました。

 

 ティッシュペーパーが足りなくなると聞くと、買い占める人がいます。

空っぽになったティッシュペーパーの棚を見る度に思うことがあります。

もし、買おうと思っていたティッシュペーパーを一つでも棚に戻すことができたなら、それは他の誰かにティッシュペーパーを一つプレゼントすることになるのではないかと。

私はコロナウイルスが猛威を振るうようになってから、余分に何かを買ったことがありません。

余分に買うことは誰かの物を奪うことになり、余分に買わないことは誰かに物をプレゼントできると思うからです。

 

 自分だけでも精一杯な状況だと思いますし、私自身もそうです。

まさかこんな状況になると思わず、社員1人、パート3人だった従業員を、この4月からパートさん全員を社員にしましたが、このままできるところまで経営していくつもりでいます。

 

 みんなが大変なときだからこそ、贈り合う気持ちで助け合って生きていきたいと思っています。

何かをプレゼントされたら、何かをプレゼントしたくなる。

そんな気持ちが好きです。

 

 先に触れた「居場所」を届ける発想も同じです。

大変なのはお互い様なら、まずは私たちからプレゼントを届けたいと思います。

私たちが居場所をつくる上で欠かせない「本とコーヒー」をセットで届けることができ、さらに、ゆるやかなつながりが生まれる仕組みを考えています。

具体的な方法については改めてお知らせさせていただきたいと思っています。

 

 今朝、ひさしぶりに晴れ間が差し込む空を見上げたら、綺麗な虹が出ていました。

居場所がなくてしんどい人の心に綺麗な虹がかかるように、会えない人にも「居場所」を届けられることを始めていきます。

 

※写真は昨年末頃にひびうた前から見た虹です。